腐男子くんはめげない

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高嶋くんに会えるのはあの日食堂で見かけた日以来だ。高嶋くんは派手な見た目から笑顔が可愛くて優しい雰囲気の男子高校生に変身していた。それが本当の高嶋くんだったのかすごく生き生きとしていた気がする。もはや天使が降臨したと言っても過言ではないくらい可愛くて、目があった途端に凄い勢いで逸らしてしまった。 体育祭でのコスプレもどストライクですぐに写真部へ焼き増しをお願いしたが、他生徒からも依頼が殺到していてまだ手元には届いていない。 競技中、高嶋くんを連れ去っていった一ノ瀬は高嶋くんとどんな関係だか気になるところだが今学園中で流れている噂は信用できない。本人から聞く事ができればいいけれど、今の俺は高嶋くんの前で豆腐メンタルだから無理かもしれない。 モヤモヤしながら視線を注いでみるが、一ノ瀬は涼しい顔で作業をこなしていて真実は謎に包まれるばかりだ。 「ごめん、ちょっと用事で出る」 「うん、いってらっしゃい」 急ぎの仕事もない為、すんなり生徒会室を出る事ができて俺は足取りも軽やかに待ち合わせ場所へと向かった。 「あっ!望月様!!こちらです!」 待ち合わせ場所であるサンルームに着くと、もう既に親衛隊たちが来ていて俺に向かって大きく手を振っていた。 「高嶋様は中でお待ちです!」 「頑張ってください!!」 「楽しんでくださいね。」 親衛隊の温かな言葉に勇気をもらって頷くと、隣に高嶋くんの友人もなぜかスマホを片手にスタンバイしていて俺は首を傾げた。 「彼は……」 「あ、お構いなく!僕はココで2人のLoveを見届けるので。」 何がそんなに嬉しいんだか、満面の笑みで見送ってくれた彼の手首を見て俺は目を細めた。しかし視線に気付いたのかその手は後ろへ隠されて、「何も気付くな」と目で訴えられている気がした。
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