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「じゃあいってくるね」
高嶋くんの友人のご要望通り、何も気付いていないフリをして俺は薄い笑みを貼り付けた。そして高嶋くんが待つサンルームへと足を踏み入れる。
緑と花に囲まれた空間に一際目立つ金髪を見つけて俺の胸は知らず知らずのうちに高鳴っていく。白色のガーデンチェアに腰掛け、頬杖をついて木々を猫のようにボーッと眺めている姿が可愛らしくて自然に頰が緩んだ。
「高嶋くん」
彼の前では格好良くスマートでいたくて余裕ぶった態度をしてみるが、振り返った高嶋くんの顔を見てしまえば内心それどころではない。
「望月……せんぱい…」
「ん゛っっ……!?」
一瞬自分の身に何が起こったのかわからなかった。拳銃でパァンッと心臓を撃ち抜かれた気がして胸を押さえてみるが何度見ても血はついていない。
「……今、なんて?」
「………もういいでしょう。何か用ですか?」
「ちょちょちょっ、まっ……もう一回!もう一回だけ聞かせて!!!」
俺だけに聞こえた幻聴かと思って聞き返してみるが、高嶋くんは顔をほんのり赤く染めてそっぽを向いてしまう。俺は慌てて高嶋くんに駆け寄って顔を覗き込んだ。すると口をキュッと結んで、ジロリと可愛らしい睨みをきかせてくる。
「……一応、先輩ですし。」
「じゃあ!親しみを込めて千鶴先輩だともっともっと嬉しいんだけどな〜」
「千鶴先輩?……意外。良い名前ですね。」
きっと断られるだろうと思いながらも期待を込めて口にしてみた。すると高嶋くんはそんな名前だったろうか?と考えるように首を傾げたあと、俺にふんわりと微笑みかけた。
俺の心臓がまた爆発しそうになったのは言うまでもないだろう。
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