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先輩呼びされるのはなんだか新鮮だった。この学園の生徒は″ 望月様 ″とか″ 副会長様 ″と呼んでくるのが普通だから、まさか高嶋くんからそんな風に呼ばれるなんてこれほど嬉しいことはない。
だけど、俺のことを″ 望月 ″と呼んでいた時ではなくて、こうして″ 千鶴先輩 ″と呼んで敬語を使ってくれる今の高嶋くんが本来の姿なのだろう。
「ごめんね、いきなりこんなところに連れてこられてビックリしたでしょ?」
高嶋くんの見えないところで手の甲を抓って理性を保ちつつ、親衛隊が用意してくれたティーセットに目を向ける。
「まぁ…縁切られたと思ってたので呼ばれてビックリでしたけど。」
「えっっ!?なんで??」
紅茶の茶葉をポットに入れていると高嶋くんが衝撃的な発言をしてきて、俺は思わず茶葉の入った缶とスプーンをボトッと落としてしまった。縁を切った覚えなんて全くない俺からしたらその発言は寝耳に水というやつだ。むしろ高嶋くんとの縁を繋ぎたいくらいなのに。
「わっ…大丈夫ですか?」
高嶋くんはサッと立ち上がって僕の方に駆け寄ってくると、フワリと柔軟剤か何かの匂いが鼻を掠める。そして俺の隣に肩を並べ、テーブルに撒き散らしてしまった茶葉を手で丁寧に集めてくれる。
「これ、どうしますか…?」
それほど背丈も変わらない彼が俺の瞳を見上げると、一瞬だけ時が止まったような気がした。手の届く距離、顔を近づければキスさえ出来てしまう。
「千鶴先輩…?」
「高嶋くん……俺、君のことが好きだ」
2人だけの空間で嬉しくて、ふわふわしていて、ついポロっと本音が出てしまった。しかし俺は自分が告白してるのにも気づかないほど浮かれていて、事の大きさに気づいたのは高嶋くんの瞳が大きく見開いたのを見た時だ。
やってしまった。
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