腐男子くんはめげない

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「…ご、めん……ごめんごめんごめん。違う、いや、違くないんだけど…ごめん。言うつもりなんてなかったんだけど…あれ、おかしいな」 頭が真っ白になって正常に動いてくれない。何か言い訳の一つでもしなければ、ノーマルな高嶋くんからしたらきっと迷惑な想いでしかない。このまま離れていってしまうのは嫌なのに、自分のこの想いを否定することができないなんて。こんな感情は初めてだ。 「どうして謝るんですか?」 「え?」 視線を彷徨わせ狼狽えていた俺は高嶋くんの一声で落ち着きを取り戻した。 「そりゃビックリしたし、気持ちに応えてあげられるわけじゃないけど、人から好意を向けられて迷惑だなんて、俺は思いません。ビックリ9割、嬉しい1割って感じ……わかります?」 「う、ん………わかる。」 今まで焦って動揺していたのが嘘みたいに高嶋くんの言葉が胸の中にストンと入ってきた。好きな人に想いを受け止めてもらうってこんなにも幸福感に満ち溢れていくのか。 これまで告白されても中途半端に想いを返して優しくしたり、最低な言葉で相手を振っていた俺にとってこの衝撃は大きかった。そしていかに自分がクズな男か思い知らされる。 「ははっ…参ったなぁ。そういうところが本当に好きだよ」 溢れ出したら想いはもう止まらなくて、別に付き合えるわけでもないのに俺は気づいたら幸せオーラ全開で頰を緩ませた。 するとさっきまで平気な顔でいた高嶋くんが沸騰したかのようにボッと顔を赤らめて、睫毛を伏せる。 「……そ、そもそも、俺を好きになった理由って?」 「顔……ちょちょちょっ、そんな冷たい目で見ないでって!君の、ほら…その……笑った顔が…」 赤く染まっていた顔が「顔」と聞いた瞬間にサーッと冷めていくのを感じて俺は慌てて弁解する。しかし好きなところを本人の前で言うのはなかなか勇気がいるし、なにより恥ずかしい。
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