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「たか、しま…くん」
宗方は瞳に涙を溜めて俺を見つめた。何か言いたげな表情をしているが、色んなことが一編に起こって困惑と恐怖でいっぱいなのだろう。その健気な姿を見て、思わず俺は震える小さな体を抱きしめた。
「遅くなってごめん……」
宗方は俺の胸に顔を埋めながらふるふると首を横に振った。そして俺の背中に手を回して強く抱き締め返し、声を押し殺すように泣き続けた。
「僕、高嶋くんたちと一緒にいない方がいいのかな?」
「そんなこと言うな、ばか!」
一頻り泣いたあと、宗方は声を震わせながらそう言った。俺はそれを聞いて、離してやるもんかともう一度強く抱きしめる。
「俺は……俺たちは宗方と一緒にいたい。宗方は?」
「……っ、一緒に…いたいよ……」
「周りなんか気にするな、俺が絶対守るから。」
お互いの気持ちを確かめ合えて、なんだか宗方と本当の友達になれた気がした。
「うん…うん……ありがとう。……夏輝、くん」
「……!当たり前だ。倫太郎」
「名前呼びはフラグだから回避!」と言っていた宗方が俺の名前を呼んでくれて、俺も名前を呼んだ。なんだか照れ臭くて顔を合わせて「ひひっ…」と2人で微笑み合った。
─ カタッ
ドアの方から物音がして、俺たちは抱擁しながらそちらに目を向けた。するとそこには酷く傷ついたような表情をしている三好先輩が立っていた。
「三好先輩どうして…?」
「三好先輩も探すの手伝ってくれたんだ」
「ありがとうございます、先輩。でも僕はもう大丈夫です!」
「そっか……良かった。」
三好先輩は宗方が無事だとわかってホッとしたような、でも少し悲しげで、複雑な笑みを浮かべた。
それから俺は凪と槙田に連絡してから宗方と一緒に風紀室へと向かった。
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