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風紀室に着くとそこには新さんと風紀の顧問、担任である矢野がいた。あの男子生徒2人も恐らく別室に拘束されているのだろう。俺は隣の生徒指導室へと通され、これからあるであろう事情聴取と過剰暴行についての説教を待つのみだ。
宗方の件はきっと他にも嫌がらせをしていた生徒がいるだろう。見えないところでやるなんて本当に陰湿すぎる。早く解決の方向へと動いていってほしい。
─ ガラガラ
「話は聞いたぞ救世主」
しばらく待っていると、部屋に矢野がやってきた。学年主任とかもっと偉い先生がやってくると思っていたから、変な緊張が解けた。
「……なんだ、矢野か」
「教師に向かってなんだとはなんだ。」
こうして軽口を叩いてみるが、矢野の顔を見てホッとしている自分がいるのも事実だ。
矢野はなんだかんだ俺の目線に立って考えてくれるし、それに矢野にだったら怒られても良いと思える。それは他の教師の説教を恐れているわけじゃなくて、矢野を信頼しているからこそ思えることなのだ。
「それにしてもお前はヒーロー気質だな。星乃の時といい、今回のこともそうだが。」
「……この学園がおかしいんだよ」
矢野は俺が座っているソファーに足を組んで座り、眉に皺を寄せてケラケラ笑った。
「まぁでもお前も今回はちょっとやりすぎだ。」
「うっ………別にどんなに怒っても説教されても構わないけど俺は絶対謝らない!アイツらが全部悪い。」
「だな。俺もそう思う。」
「へ?」
まさか同意されるとは思っていなくて、間抜けな顔で間抜けな声が出てしまう。何で?という視線を向けると、矢野は頭をガシガシかきながら深い溜息を吐く。
「注意しとけって言われたんだよ、あの風紀顧問の笹部ってヤツに。本当にアイツは堅物っつーか…」
仮にも先輩教師のことをそんな風に言ってしまっていいのだろうか。でも不思議と矢野なら許されてしまう気がする。
「お前がやってなかったら俺がやってたかもしれねぇ。ありがとな」
「俺は……別に…」
まさか礼を言われるとは思っていなかったからか余計に照れ臭くて、口をモニョモニョさせた。
やっぱり、矢野が担任で本当に良かったなと思う。絶対口には出してやらないけど。
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