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早乙女 朝陽side
窓際に置いてある椅子に腰をかけ、組んだ足に乗せている本のページを1枚めくる。そよそよと吹く風がカーテンをサァッと拐って、俺は黒縁眼鏡を外し空を見上げた。
ここは空き教室でよく親衛隊で会議を開く場所だ。大きな本棚がいくつか置かれており、難しそうな本がたくさん並べられている。
「隊長?」
「あ゛?」
「ピギャァッ!?」
振り向いてその人物を見れば奇声を上げられ、ハムスターのようにぶるぶると怯えられる。小柄な体格と綿あめのようにふわふわした茶髪を見て俺は本をパタンと閉じた。
「何すか。変な声上げて」
「隊長が怖すぎるんだよっ!!!」
「それ普通本人の前で言いますか?」
俺の冷静なツッコミに「にゃはは…」と甘ったるい笑みを見せるのが親衛隊副隊長である榊 叶羽先輩だ。因みにこの人は3年生で、親衛隊の中で俺に普通に話しかけてくる勇者でもある。たまにこうやって怯えることもあるけど。
「で?何か用ですか?」
「今日も高嶋くんを拝めたんだよ!!イケメンなんだけど可愛いんだよなぁ…」
この人は高嶋さんマニアと言っても過言ではない。高嶋さんが好きすぎるあまり、暇な時間があれば影からこっそり見ていたり、高嶋さんの魅力を語っている。本人に認知されていないのが可哀想なほどだ。
「俺、基本タチだけど高嶋くんなら抱いても抱かれてもいいもん。」
「そういうの本当に気持ち悪いんで消えてください。」
「ちょ、俺先輩なんだけど。」
榊先輩がタチとか全然知りたくなかったし、むしろネコかと思っていたから衝撃的だ。
「隊長って本当に高嶋くんのこと好きなの?抱きたいとか思わない?」
「全く」
高嶋さんにだったら抱かれてもいいと思えるほど忠実なつもりではいる。しかしそれは言葉の綾であって、いざそんな場面になってしまったら高嶋さんであろうと背負い投げをしてしまうに違いない。
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