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「俺はあの人の人柄に惚れてるんで。」
「男前かよ」
榊先輩は「つまんねぇな」とでも言いそうな顔で俺の前の席に腰掛けた。
「とか言って隊長が高嶋くんの写真たくさん買ってたの俺知ってるよ」
榊先輩はそう言いながら鼻を高くして得意気にニンマリ笑った。
「親衛隊長として当然のことをしたまでです。高嶋さんの指一本見逃さず写ってるものは全部買いました。」
「おまっ…、そいうのがキモいって言うんだぞ」
至極当然のことを言ったまでなのに榊先輩はドン引きしてますって顔をしながら、冷めた目でこちらを見てくる。
「ま、かく言う俺も高嶋くんのコスプレ写真はたくさん買ったけど。え?何に使うかって?バーロー、そんなわかりきったこと聞くなよ。照れるだろ」
「聞いてませんし、知りたくもありませんでした。」
今度はこちらが冷めた目を送る番だ。ちょいちょい入れてくる榊先輩の気持ち悪い情報は記憶から抹消しておこう。
─ ヴゥッ
そんな話をしていればスマホが小さく揺れた。すぐにスマホを確認すると、高嶋さんから連絡が来ていた。
「ふーん、隊長ってそういう顔もできるんだ」
「は?」
高嶋さんからの連絡にすぐ返信しようと文を考えていると、榊先輩の口から思っても見ない言葉が飛び出した。
「いつもきっつーい顔してるけど、今ちょっと嬉しそうな顔してた」
あまり表情には出ないと言われる方ではないのだが、榊先輩曰くいつの間にやら表情が緩んでいたらしい。そんな顔を見られているとは思わず、俺は咄嗟に口元を押さえた。
(そうか。俺は今笑っていたのか…)
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