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「全然そんな風には見えないですけどね」
「あ、田島じゃん。準備できたの?」
「出来たからここにいるんでしょう?はぁ、馬鹿ばっかで困りますね。」
いつの間にこの教室に入ってきたのか親衛隊の一員である田島がそこにはいた。田島は高嶋さんと同じ2年生で、眼鏡が似合うインテリ系男子だ。なぜ先輩をつけないかって?田島は田島だからである。
どうやら高嶋さんとのお茶会の準備が出来たようだ。一刻も早く高嶋さんのお迎えに向かわなければ。
「隊長は高嶋くんの前だと結構尻尾フリフリしてる気がするけどなー」
「この前、高嶋様から連絡来た時覚えてます?親衛隊が高嶋様のご友人に制裁を加えていないか1人ずつ隊長に呼び出されて地獄の尋問を受けて………もう思い出したくもありません。」
「あーあん時は確かに怖かったなー。鬼かと思ったもん」
本人の前で悪口を言うなんて、この2人はなかなか肝が座っているらしい。しかし今はそれを咎める時間も惜しい。
「そんなこと今はどうでもいい。高嶋さんを待たせるわけには行かないので、早く行きましょう」
「やっふぅ!高嶋くんに会える〜!!」
席を立ち言い放つと榊先輩は両腕を上げてジャンプし、田島は窓に映った自分を見て身だしなみを整えていた。それぞれ高嶋さんに抱く感情が違くとも、慕う気持ちは同じなのだ。
「何話そっかなぁ…てか緊張して話せないかも。」
「僕は高嶋様とお会いできるだけで幸せです。」
「田島ってなんか高嶋くんのこと崇拝してるよな」
「あの方以上に素敵な人は見たことがありません。」
最近は制裁の件のこともあり、隊員たちの雰囲気はピリピリとしていた。それはもちろん自分も例外ではなく、イライラしていつも以上に人を寄せ付けないオーラを放っていただろう。
親衛隊は高嶋さんの平和な生活を守るためにあるはずなのに、何もできなかった。それどころか不安にまでさせてしまい、己の無力さを実感した。
そんなことを考えていれば無意識のうちに眉間に皺が寄っていた。
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