隠れワンコくんは見守り隊

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それからの時間は賑やかで楽しいものだった。お菓子はいちご味が好きだとか、可愛い妹がいるだとか、俺も知らなかった高嶋さんの一面が知ることができた。 高嶋さんは質問してくれた隊員にも一人ひとり名前を聞いて「君は何が好き?」とか、「兄弟はいる?」と話を広げていた。高嶋さんから興味を持ってもらって嬉しくなったのか、高嶋さんより隊員たちの方がペラペラと喋っていたような気もする。それなのに嫌な顔一つせず、楽しそうに話を聞いてくれるから隊員たちも妙に気合が入っていた。 そんな姿を見て、やっぱりこの人の親衛隊長になれて良かったと改めて感じることができた。 「早乙女、今日は楽しかったよ」 帰り道、高嶋さんは立ち止まって振り返ると嬉しそうに顔を綻ばせた。高嶋さんを部屋の前まで送るのは親衛隊長の役目でもあり、特権だ。 「それは良かったです。隊員たちも高嶋さんと過ごすことができて喜んでいました。ありがとうございます。」 「はは…本当にみんな面白かったなぁ。田島くんは終始噛み噛みで可愛かったし、榊先輩もユーモアでたくさん笑わせてもらった。」 高嶋さんの嬉々とした声に耳を傾け、たまに相槌を打ちながら肩を並べ歩みを進める。 「田中くんはさ……」 「高嶋さん」 ピタリと歩みを止めた俺を振り返る高嶋さんはまだまだ喋り足りない様子で、唇を少し開いたままキョトンと俺を見つめた。
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