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「本当に早乙女ってポチに似てるんだよなー」
「夏輝さんの犬になら喜んでなります。」
「なんか俺、命の恩人みたい」
「それぐらいあの時の夏輝さんは俺のヒーローでした」
そういうと夏輝さんは少し照れながらも満更でもないような表情で俺の腕を肘で小突いてきた。そんな何でもないようなやり取りも友達がいない俺からしたらすごく新鮮で、胸のあたりがぽかぽかしてくる。
この気持ちが一体どんなものなのか分からなくてもいい。きっと分かったとしても夏輝さんに打ち明ける訳でも誰にいう訳でもないだろう。ただただ夏輝さんの幸せを願い、できることなら少しだけ側に居させて欲しい。それだけだ。
「これからは俺が夏輝さんを守りますから。」
そう言うと夏輝さんはキョトンとした顔で俺を見つめ返し、少ししてから小さく笑った。
「だーめ。俺にも守らせて。」
そんな風に返されるとは思っていなくて、どう返事をしたら良いのかわからず言葉が詰まってしまう。
「俺、大切に思ってる人たち守れなかったら泣いちゃうけど、いいの?」
「そんなの……ズルイですよ」
「分かってて言った!へへっ」
悪戯が成功した子どものような顔で笑って、またもや俺の心を揺れ動かす。憧れの人に大切に思ってるとか、そんなこと言われたら嬉しくなってしまうに決まってるじゃないか。
「ありがと、朝陽」
俺はどうやら小悪魔的なこの人に一生敵わないらしい。
早乙女 朝陽side end…
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