夏輝くんの夏休み

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3人は終わるまで待ってると言ってくれたが、俺が先に帰っていてくれとお願いすると渋々帰って行ってくれた。 「確かに寮長は貞操観念低いけど、綺麗だし、おおらかで優しい人なのにな」 寮長の良いところを知ってもらうにはどうしたらいいか考えながら、インターホンに指を触れようとした時、ガチャリと寮長室のドアが開いた。 「あっ…と、こんにちは、高嶋くん。」 「あ…こんにちは」 俺と目が合った寮長は顔がほんのりピンク色になっていて、罰が悪そうな表情で微笑んだ。 「…まさか、」 「えっ?……つ、連れ込んでないよ!」 俺が寮長の表情を見て色々と察して部屋の中を覗こうとすると、寮長は俺の肩をガシッと掴んで首を横に振った。 「じゃあ何でそんな顔赤くして、気まずそうにするんですか?」 「そ、それは君が悪いんじゃないか……」 「へ?」 寮長は長い睫毛を伏せ、耳まで真っ赤になりながらボソボソと答えた。その姿はなんとも可愛らしく、ゲイが見たら即落ちに違いない。天性の男たらしである。 ただノンケである俺はまだこうして会ったばかりなのに、君が悪いと言われて、頭の中が疑問でいっぱいになった。 「君が、あんな大声で僕のことを庇ってくれて…しかも、今だって…綺麗とか、優しいとか…言うから……」 「……き、聞いてたんですか………」 寮長が小さく頷いたのを見て、こっちまで寮長の赤面が伝染してきて、2人とも恥ずかしさからしばらく無言になってしまった。 「…ありがとう、すごく嬉しかった。」 「俺は別に…思ったことを言っただけです。」 「それが嬉しいんだよ。他の誰かになんて言われても良い。ただ君がそう思ってくれるだけで僕はこんなにも心があったかくなる」 そう言ってはにかむような笑顔で微笑んだ寮長は妖精のように儚く綺麗で、純粋で。この笑顔を守ってあげたいだなんて柄にもない事を考えてしまった。
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