夏輝くんの夏休み

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「外出届だったよね?確かここら辺に…」 寮長室の中へ通された俺の目の前には茶菓子が用意されていたが、探し物をしている人の手前食べるのは躊躇われた。食事を目の前に″待て″と言われ、よだれを垂らす大型犬のようにその茶菓子を食い入るように見つめた。 「あったあった。これだね、はい」 「ありがとうございます。」 寮長はヒラリと1枚紙を手渡して、俺の前の席へと腰掛けた。俺は受け取ってすぐに必要事項を記入することにした。 「そういえば最近は大丈夫なんですか?」 「はは…相変わらずお誘いはくるけど、もちろん全部断ってるよ」 「…そうみたいですね」 今思えばこの部屋にあるベッドはいつも乱れていて、ベッド脇には必ずその時に使うであろう箱が常備されていた。だけど今は仮眠用であるベッドは綺麗にセットされているだけで、使われている様子さえない。 「今は前みたいに体が正常に機能してないっていうか。ネコとしての存在意義がないみたいなんだよね。かと言って誰彼構わず勃つわけじゃないからね?」 「……はぁ…そうなんですか。これ、書けました。」 「はい。確かに受け取ったよ」 この人は清楚な見た目して、言うことは18禁だから反応にすごく困る。 「それ遠慮しないで食べて良いよ」 「やった、いただきます」 そう言われた俺はイチゴ味のクッキーに手を伸ばし、今度は遠慮なくいただくことにした。見た目はうずまき模様で、サクッとしてるのにほろっと崩れて、苺の甘酸っぱさがほんのり香ってくるような感じだ。見た目以上に美味しいけれど、やっぱり千鶴先輩の手作りクッキーには敵わない。 「ふふっ…」 笑みを溢したような声に顔を上げると、寮長が頬杖をしながら俺を見て微笑んでいた。 「幸せそうに食べるなあと思って。」 俺の表情を察してか、寮長はどうして微笑んだのか答えてくれた。そんなこと言ってる寮長の方がなんだか幸せそうな顔をしているけど…と思ったが口にはしないでおく。
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