夏輝くんの夏休み

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「あっ!!おにーーーちゃーーん!」 その天使のような声を聞いた瞬間、俺は繋がれていた手を勢い良く解いて顔を上げた。すると俺の可愛い妹が手を振って遠くから駆け寄ってくる。 「春歌!!」 「へへ、早く会いたくてむかえにきちゃった」 久しぶりの再会に俺と春歌は抱きしめ合い、俺はその軽い体を抱き上げた。春歌から家の懐かしい匂いがして、一気に安心感に包まれた。 「このかっこいいお兄さん、だれ?」 「このお兄さんは…お兄ちゃんの友達だよ」 俺が抱き上げたことで視線が合ったのか、春歌は少し頰をピンク色に染めながら一ノ瀬をまじまじと見つめた。妹の手前、下手なことは言えないのでとりあえず当たり障りない答えを言っておく。 「王子さまみたい!!はるか、この人とけっこんする!」 「えっ」 その言葉を聞いた瞬間の俺と言ったら衝撃的すぎて、言葉を失い固まってしまった。それとは対極に春歌は目をキラキラと輝かせ、まるで本当に王子様を目の前にしているかのようだった。 「お兄さん、はるかとけっこんしてくれる?」 「春歌ちゃんがもっと大人になったら考えてあげる」 「うん!はるかはやく大人になる!」 「だっ…だめだ!」 まさかの春歌のプロポーズに一ノ瀬は普段絶対しないような王子様スマイルで答えていた。これでは本当に春歌から見たら完璧な王子様になってしまう。俺は寂しさと悔しさから涙をウルウルと瞳に溜めて一ノ瀬を睨んだ。 「おい一ノ瀬!」 「まずは外堀から埋めていかなきゃね」 「どういう意味だ!春歌は絶対にやらん!」 一ノ瀬は意味深なことを言いながら勝ち誇った笑みを向けてきて、俺は春歌を少し強く抱きしめた。 前まではお兄ちゃんと結婚すると言ってくれていたのに、まさか一目惚れで一ノ瀬を選ぶとは。一ノ瀬が春歌と結婚して俺の弟になるなんて、絶対に嫌だ。
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