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◇ ◇ ◇
「パパー!ただいま!」
「ただいま」
一ノ瀬とは分かれ、家に帰ってきた俺は久しぶりの我が家に頰を緩ませた。懐かしい匂いとなにも変わっていない家の中。俺の帰ってくる場所はいつでも此処なのだと再確認させられる。
─ ダダダダダダダッッ
「おかえり夏輝〜っ!!」
「うぐっ」
扉を閉めた途端、廊下を全力で走る足音がして、靴を脱いで揃えてから顔をあげれば勢い良く抱きつかれる。
「ちょっと…父さん、苦しいって…」
「愛する息子が久しぶりに帰ってきたんだからこれくらい良いだろ〜!」
頰をスリスリと痛いくらい擦り付けてくるのが、我が家の大黒柱である父さんだ。いつもニコニコして優しくて、厳しいところもあるけれど、こんな俺をいつも甘やかしてくれるんだ。
そんな父さんは息子の俺が自慢するほどのイケメンで、実年齢よりも更に若く見える。甘い顔に眼鏡をかけていて普段は落ち着いているから、今の仕事をしていなければカフェの店長とかやってそうな雰囲気だ。
─ チュッ
「ちょっ……やめてよ!もう子どもじゃないんだし……」
いつものように頰に軽くキスをされて、俺は顔を真っ赤にしながら頰に触れた。前までは毎日帰ってくるとされていたから習慣になっていたけど、今はなんだか恥ずかしい。
「俺からしたら今も夏輝は可愛い子どもだよ。」
なんだかんだ俺は父さんにも弱いらしく、優しい言葉で包まれたら抵抗する気力もなくなってしまうのだ。父さんの包容力といったらそりゃもう新さんくらい敵わない。
「よし、夏輝。久しぶりに一緒に風呂に入ろう」
「ええ…」
「男同士積もる話があるだろう?」
「……まあ別に良いけど。」
「じゃあはるかは宿題やってるね〜」
帰省するたびに父さんは風呂に誘ってくるが、特別広いわけでもない我が家の浴槽は大人が2人入るのがギリギリなので勘弁して欲しい。
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