夏輝くんの夏休み

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それからのぼせるくらい父さんと話して、夜ご飯は出前でお寿司をとってくれた。明日からは俺の料理が食べられるって2人とも両手を上げながら喜んでいた。寝るのも今日だけは母さんの近くである仏壇の前に布団を敷いて3人一緒に川の字で寝た。 2人の寝息が聞こえてくる中、俺は天井を見上げながら一ノ瀬から聞いた話を思い出していた。 『夏輝はさ、犬飼が虐められていたことを知ってる?』 『うん』 『それは夏輝がアイツらに目をつけられてからも同じだったんだよ。』 『え……?』 アイツらというのはきっと俺を虐めていた主犯である浅海達のことだろう。てっきり俺が目をつけられた時から天音くんへの暴力は途絶えたのかと思っていた。 『まぁそれも本当に自分の身のことを考えない馬鹿な理由だけどさ。……夏輝は関係ないからそっとしてやってほしいってアイツらに頭下げてたんだよ。クラスの奴らみたいに見て見ぬフリしてれば何もされなかったかもしれないのに、余程友達が大事だったんだろうね』 『…っ、そんなこと、一言も……だって天音くんは俺のこと嫌いって……』 『それは犬飼の本音だと思う?』 『……………』 たった一回、嫌いと言われただけで関係が壊れるような仲ではなかった。長い間ずっと一緒にいたわけではないけれど、家族の話をしたり、学校の先生のモノマネをして笑ったり、あの時間は全部本物だ。俺が疑ってしまえば、天音くんとのあの日々を信じてあげる人が誰もいなくなってしまう。 それからも一ノ瀬の話は続いた。 俺がいないところで天音くんが俺のことを庇っていてくれたこと、そして一ノ瀬がアイツらと話していたあの日のこと。 あの日は浅海達が俺の家族のことまで蔑み始めて、天音くんが一人で彼等に立ち向かっていったらしい……─
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