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「…あ、いた。」
「あっ!あれが夏輝の友達?」
「友達っていうか……まぁ、うん」
わざわざ一ノ瀬と連絡を取り合って待ち合わせしたのは神社の近くの公園。待ち合わせ場所にしたこの場所も上に提灯がぶら下げてあり、ドンチャラ賑やかな音がもうすぐそこに聞こえてきて既にお祭り気分である。
一足先に待ち合わせ場所に着いていた一ノ瀬は意外にも浴衣姿で待っており、扇子で風を煽ぎながら賑わう子ども等を見て涼しい顔をしていた。紺色の浴衣姿でいつも以上に色気を振り撒き、周りの女性が卒倒してしまいそうになっている。
「ん?あの子は志摩くんじゃないか」
「えっ…?」
「おーい、志摩くーん」
父さんを見ると一ノ瀬に向かって笑顔で手を振っていて、それに対し一ノ瀬はペコリと頭を下げた。混乱している俺をよそに父さんと春歌は一ノ瀬の元へと行ってしまう。
「まさか2人が友達になっていたとは…」
「ちょっ、父さんどういうこと?」
「あぁ、夏輝は大志覚えてる?」
「うん。いつも来る時苺のケーキ買ってくれる大志さんでしょ?」
「その大志の息子だよ」
「ええぇえぇえっっ!!??」
大志さんは父さんの高校時代からの友人で、よく家に遊びにきては俺を可愛がってくれていた。すごく美形で一見近寄り難いけど優しくて、最近は会えなくなってしまっていたけれど、まさか一ノ瀬のお父さんだったなんて……!
「寧ろ知らなかったの?」
「知らない!大志さんは大志さんだろ…確かに似てるけど、そんなの一言も言ってなかったし!」
「まぁ俺は昔から夏輝たちの写真見せてたからね」
父さんの問題発言を聞いた俺は一ノ瀬をパッと見ると、一ノ瀬は首を傾げ意味深な笑みを浮かべた。俺の顔は見る見るうちに真っ赤になり、父さんの肩を掴んで揺らした。
「ちょっと、父さん!誰にでも俺たちの写真見せるなって言ったよね!?」
「ハハッ懐かしいな。本当に高校時代の大志にそっくりだ。俺、男だと思わなくて大志に告白したことあるんだよ。そしたら大志、鳩尾思いっきり殴ってきてさ。あの時痛かったな〜」
いや、どんな黒歴史語ってるんだ!と心の中でツッコミを入れつつ、またもや父さんの発言に呆れて怒る気にもならなくなってしまう。
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