夏輝くんの夏休み

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「だって……ひひっ…それ、天音くんが選んだの?ふははっ」 「ああ、これ……本当は食べられるヒーローで有名なアンパンボーイにしようかと思ったんだけど、これにした。変かな?」 「変!それ選ぶ人初めて見たよ」 「…夏輝がそうやって笑ってくれると思ったから」 そう言って照れたように微笑む天音くんの表情が懐かしくて見惚れていたら、やっと自分の笑い声が収まってくれた。それから俺は天音くんと一緒に石段に座って話した。 「ごめん」 石段に座って開口一番に天音くんは謝罪してきた。まさか謝られるとは思っていなくて、俺は顔をあげた。 「俺、餓鬼で弱かったから夏輝の守り方わかんなくて……傷付けた。本当はずっと一緒にいたかった。」 人から聞いた言葉と本人から聞いた言葉ではやっぱり言葉の重みが違って、本当にそう思っていてくれたんだって涙が出そうになった。 「違う……俺が気付けなかった。友達なのに。気付いてあげられなくて、ごめん。」 「夏輝は謝らないで欲しい。全部俺が招いたことなんだよ。」 そう言って話してくれたのは浅海たちに虐められるキッカケになった話だった。 「俺、中学の時すごく八方美人でさ、誰にでも優しくしてたんだ。浅海や湖上の彼女から色々相談乗った時もそう。DVを受けてるって泣く彼女を慰めてたら、その彼女は何を勘違いしたのか俺にキスをしてきて……その場面を見られたんだよ。 そりゃ彼氏も怒るよね、そんなところ見たら。彼女も無理やりされたなんて言うから俺ボッコボコにされて、だけど彼女からしたなんて言ったらまたその子がDVされるんじゃないかって。 とにかくその時の俺は言葉も力も弱くて、何も出来なかったんだよ」 俺の主観で言わせてもらうと、天音くんが悪いところなんて一つもなかった。彼女に優しくしてあげられなかった浅海たちの自業自得、そして天音くんに手を上げるのは筋違いも良いところだ。
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