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「ふーん。なんか一ノ瀬も変わったね」
「お前は相変わらず煩い」
俺が真ん中の3人横並びで屋台が並ぶ参道の方へと歩いていると、天音くんは片眉を上げてクスクス笑った。一ノ瀬が誰かと普通の友人のように話す姿は初めて見たような気がする。それほど2人は気の知れた間柄なのだろう。
「2人って仲良いんだ」
「「良くない。……って、ハモるな(らないで)」」
「ほら、仲良い」
「「………。」」
この光景を見ていたら、もしかして中学の頃でこの3人で仲良く過ごせたのかもしれないとちょっとだけ思った。だけどあの出来事がなければ新さんに会うことも、今の高校に通い大切な友達に出会うこともできなかっただろう。
「じゃあ俺は友達と来てるから、また連絡するね!夏輝」
「あっ、うん。またね、天音くん」
「一ノ瀬は夏輝のことよろしく」
「お前に言われなくても」
そんな会話を交わし、天音くんは爽やかに手を振って友人の元へと行ってしまう。俺も微笑みながら手を振り返して、その後ろ姿が見えなくなってもしばらく一点を見つめていた。
「まぁ、良かったね」
「うん」
俺はふわふわした気持ちになって、一ノ瀬が隣にいるのにも関わらず足取りが軽かった。天音くんの顔を頭に思い浮かべるたびに、まるで初めての彼女ができたかのようにニヤけてしまう。
俺は一ノ瀬に顔を見られないように服についているフードを被った。
「あの、一ノ瀬」
「なに?」
「その…っ、ありがとう」
一ノ瀬に礼を言うのはかなり小っ恥ずかしい気持ちになったけれど、結局天音くんとちゃんと仲直りができたのは一ノ瀬のおかげと言っても過言じゃない。
「一ノ瀬がいなかったら、きっと天音くんと仲直りはできなかったと思う。」
「そう」
「……一ノ瀬がいてくれて、よかった。ありがとう」
フードの裾をこれでもかというくらいギュッと掴み、恥を忍んで礼を言った。
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