青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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「材料は揃えられても器材がない……」 ボールやフライパンを置いている棚を開き、肩を落とし溜息を吐く。甘いものを作るにあたって、計量器や粉ふるい器は必須だと俺は思っている。この学園で買うとなると、揃えるのにもかなりお金が掛かってしまうし悩みどころだ。 「あ!そういえば……」 良いことを思いついて、連絡先からその人物を探す。お洒落なプロフィール写真だな〜と思いながら通話ボタンを押そうとして、すぐに我に返った。 「千鶴先輩の部屋、絶対一人部屋だよな……」 千鶴先輩は以前美味しい手作りクッキーを振る舞ってもらったことがあるくらいお菓子作りが超絶得意なのだ。だから部屋に行って器材を借りて、あわよくばお菓子作りを教えてもらえればと思ったのだがここで一つ問題がある。 『高嶋くん……俺、君のことが好きだ』 蘇るあの記憶。男の人に本気で告白されるたのはあれが初めてだった。中学の頃はよくされていたけど、きっとあれはネタとか罰ゲームに違いない。 とにかく、千鶴先輩が俺のことを好きだっていうことは少しはそういう目で俺を見ているって訳で。そんな千鶴先輩と俺が2人きりになってしまったらどうなるだろうか……。 「いや、考えすぎか……千鶴先輩ああ見えて良い人だしな。」 しかし、好意を寄せられている相手に自分から接触して良いものか。その想いに応えられるわけでもないのにホイホイ会いに行ったら尻軽なのでは…?と変なところまで考えてしまう。 「自惚れすぎか」 告白される経験が少ないから自分に酔ってしまっているみたいだ。これでは千鶴先輩が悪い人みたいになってしまう。そんなに深く考えず、お願いするだけしてみよう。恋愛感情がなくても俺は千鶴先輩とちょっとは仲良くしたいと思っているし、千鶴先輩のことを知る良い機会だろう。 通話ボタンを押そうとするたび何回躊躇っただろうか。キッチンで座り込むこと30分、やっとのことで千鶴先輩に電話をかけることに成功した。
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