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「なんか妬けちゃうなぁ」
ボールにいれたバターと砂糖を混ぜながら千鶴先輩は呟いた。
「千鶴先輩もご褒美が欲しいですか?」
「ええ!!?ぁ…い、良いんですか!?」
「ぷっっ、…ふふっ、はははッ」
「………俺の心弄ばれた。責任とって」
「嫌です。」
そう言うと千鶴先輩はシュン…と肩を落として混ぜる作業を続ける。
千鶴先輩は俺の言葉一つで驚いたり、テンション上がったり悲しんだりしている。この人普段はみんなの前で王子様キャラなのに、俺の前だと全然格好つけられてなくてから回ってるな。
(なんかこの人……)
「……可愛いなぁ」
「えっ……?」
「え?」
心の声がそのまま声に出ていたらしく、千鶴先輩は真っ赤な顔をこちらに向けて固まっている。
「俺のこと可愛いって言った?」
「あ…いや、その悪口とかじゃなく、なんか普段とのギャップが可愛いなって……思って…」
「そっ……か…」
嫌な思いをさせてしまって申し訳なく思いながら弁解すると、千鶴先輩は顔を伏せて作業を進めていく。髪が邪魔で表情がよく見えなくて恐る恐る顔を覗き込みながら、謝ろうと口を開く。
「嫌でしたよね、すみません。」
「ううん、むしろ嬉しいよ」
「嬉しい…?」
顔を上げた千鶴先輩の表情は思っていたものと違って、照れ臭そうに微笑んでいた。
可愛いと言われて嬉しい気持ちが俺にはよくわからなかった。男に生まれたならば格好良く見られたいものじゃないのか。それが好きな人なら尚更に。
「嫌かもしれないけど、俺も高嶋くんのこと可愛いって思うよ。それは外見だけじゃなくて、仕草とか笑顔とかにキュンとして、可愛いなぁ好きだなぁって思うんだよね。」
「……っ、」
「好きって感情はなくても高嶋くんの心をちょっとでも動かせたなら、俺嬉しいよ」
またこの人は惚気話をするみたいな顔でサラッと恥ずかしいことを本人に言ってくる。また俺ばっかりドキドキして、これじゃあどっちが告白したのかわからない。
やっぱり部屋に2人きりはやめるべきだった。心臓がいくらあってももたない。
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