青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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「なんかちょっと親近感湧きますね」 「でしょ?」 高嶋くんがこね終わった生地を寝かせるため冷蔵庫に入れながら、ドキドキしてるのがバレないように返事をした。 「1時間くらい寝かせるから、ちょっとおやつでもどう?」 「やった!」 冷蔵庫から取り出したガトーショコラを見せると、高嶋くんは目を輝かせた。俺はリビングの机にガトーショコラと紅茶の用意をして、ソファに腰を掛ける。高嶋くんはエプロンを外して俺のすぐ隣に座ってきて、その瞬間に良い柔軟剤っぽい匂いがしてドキドキした。 「うっま!!これすごい濃厚ですね。もうパティシエが作ったやつみたいです。すごい…」 「良かった。クーベルチョコレートっていうのを使ってて、空気を含ませないように混ぜるのがコツなんだよ。」 へぇ〜!と感心しながら、俺手作りのガトーショコラを存分に味わってくれている姿を見て頰が緩む。誰かが食べて笑顔になってくれるのはもちろん嬉しいけど、高嶋くんが喜んでくれるのは格別に幸せを感じる。 「ふと疑問に思ったんですけど、千鶴先輩はバレンタインデーにもらったものはどうしてるんですか?沢山もらってますよね?」 「もちろん全部食べるよ。去年はダンボール5箱分くらいもらったかな」 去年の事を思い出しながら話すと、高嶋くんが驚愕の表情をしているのがわかった。高嶋くんも可愛いし格好いいから貰いそうだけど、前までのイメージがあったらきっと渡せる勇者はいなかっただろう。 「いくらお菓子が好きとはいえ全部食べるの大変じゃないですか?」 「大変だけど手作りの大変さとか想いが詰まってるのとか、すごいわかるからさ。無下にはできないんだよね」 「へぇ……千鶴先輩のそういうところ素敵ですね」 高嶋くんはそう言うと一口紅茶を飲んで、ふぅ…と一息吐いた。そしてガトーショコラを一口に切り分けフォークに刺すと、優しい表情をしながら色んな角度に変えてそれを眺めた。 ─ ドクッドクッドクッドクッ 本当に何気なく呟いた高嶋くんの一言に俺はキュンっとさせられてしまって、心臓が言うこと聞かない。高嶋くんは俺を否定しないで、ちゃんと良いところを見てくれている。 (あぁもう。そういうところ好きだなぁ……) 今日はあわよくば俺のことをちょっとでも好きになってもらおうと思っていたのに、ますます高嶋くんの魅力に惹かれてしまう。俺ばかりがどんどん好きになってしまう。 いっそ、このドキドキが伝わってしまえばいいのに─…… 望月 千鶴side end…
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