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ちょっと楽しんでいる俺の表情を察してか、新さんはスッと目を細め一つ間を置いた後、口角を上げニヤリと笑った。
「そうだな、妬いてる」
「えっ……」
思いもよらぬ答えにどう返事をして良いのが正解なのかわからなくなった。新さんのことだからまた俺のことを揶揄っているに違いない、と思いながらも真っ直ぐ見つめてくる新さんの綺麗な黒い瞳から目が離せなくなる。
「またそうやって揶揄って…」
「揶揄ってない。これは俺の本音だ。」
新さんは俺の反応を見て絶対に面白がっているが、嘘を言っているようには見えない。それは新さんに憧れている俺からしたら物凄く嬉しいことなのだが、それを悟られたが最後揚げ足を取られ形勢逆転されてしまう。俺は心の内を見透かされないようニヤける顔を必死に我慢して、咳払いで誤魔化した。
「新さんでもヤキモチ妬いたり可愛いところがあるんですね」
「誰にでもって訳じゃない。夏輝限定だな」
「グッ………」
クリティカルヒットとはまさにこの事で、女として生まれていたら自分がこんな特別扱いされることにめちゃくちゃ勘違いしていたと思う。
(……いや、勘違いなのか?)
普段新さんの優しい瞳が誰にでも注がれているわけではないのは遠巻きに見ていたからよくわかっている。自分に人一倍厳しく、風紀委員長として周囲にも厳しい目を向けなければならなかったからこそ″ 鬼の風紀委員長 ″なんて名もついたくらいだ。それでも後輩たちが慕ってくれているのは新さんの努力の賜物だろう。
「新さんって俺のこと……」
少しだけ上にある瞳を見上げると、新さんは目を見開いた。そしてフッと表情を和らげると、小さく頷いた。
(やっぱり、そうなのか…?)
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