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「弟みたいに思ってますよね!」
「…………………。」
俺が微笑みながらそう言うと、新さんは衝撃を受けたかのように真顔のまま固まった。別に何も変なことは言っていないはずなのに、新さんは自分の前髪をかきあげて大きなため息を吐く。
俺は長男だから新さんみたいな格好良くて頼れる兄がいたら凄く嬉しいのだが…。
「俺もそろそろ頑張らないとな」
「え…なにを?」
「好きな奴に男として見られるように、な」
ポンッと優しく頭を撫でられ大きな手のひらの安心感に包まれていたら、少し遅れてその言葉に衝撃を受ける。
「えっっ新さん好きな人居るんですか!?」
「ああ。知らなかったか?」
知らなかったですとも。それが男なのかも女の子なのかも分からないが、新さんが好きになる人ならきっと素敵に決まっている。
(男の人が好きだったとしたら、こうやって2人で会うこともなくなってしまうのかな。)
新さんが膝枕をして慰めてくれたことや、会うたびに抱き締め頭を撫でてくれたことを思い出すと寂しくなってくる。
「新さんに想われている人が羨ましいです。」
「………それは何故だ?」
「だって、新さんなら絶対幸せにしてくれますから。」
後輩である俺にでさえ、こんなに優しくしてくれる人だ。寂しい時、辛い時、いつも側に居て支えてくれるこの人が好きな人を幸せに出来ないわけがない。
「俺、応援します!でも、寂しいのでたまには俺にも構ってくださいね?」
「はぁ……お前はどこまで鈍感なんだ?先が思いやられる。」
新さんにコツンとデコピンをされて、おでこを抑えると呆れた顔で笑われた。何で俺が鈍感だと言われているのかわからなくて首を傾げると、新さんは俺の鼻を摘んで顔を近づけてくる。
「これから覚悟しておけ」
「ひゃい」
そんなことを言って去っていく新さんはやっぱり格好良くてイケメンで。何を覚悟するのかよくわかっていなかったが、頷くことしかできなかった。
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