青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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「これ………リストバンド?」 「うん」 奏太は袋から取り出したものを首を傾げてまじまじ見つめた。黒色にスポーツメーカーのロゴがついたシンプルなデザイン。実は内側に応援の気持ちを込めてニコちゃんマークの刺繍をしてあるのだが、奏太はまだ気付いていない様子だ。 「俺に?」 「う、ん…」 流石に男からのプレゼントは引かれたかもしれない。奏太は感情が表に出やすいタイプだからこの反応を見る限り、このサプライズは失敗してしまったのだろう。そう思うと如何に自分が恥ずかしいことをしてしまったのか自覚し始めて、穴があったら入りたい衝動に駆られた。 「っ…ごめん!やっぱり、違う」 もうこの空気感に耐えられなくなってリストバンドを取り返そうと手を伸ばしたら、ヒョイっと避けられてしまう。反射的にそうなったのかと思ったが、何度やっても同じことの繰り返しで俺は奏太が恨めしくて少し睨んだ。 「はい、これでもう俺のもの」 俺の睨みに耐性を持っている奏太は微塵も気にせずリストバンドを手首につけ、まるで口付けでもするかのようにその手首に唇を寄せた。 「な゛っ……!!?」 奏太はリストバンドに唇をつけたまま俺に視線を向けてきて、まるで自分が口付けされているかのような錯覚が起こり、一気に顔が熱くなる。俺の反応を見てイタズラが成功したと言わんばかりに満足気に目を細めた。 「めっちゃ嬉しい。一生大事にする」 「別に……一生じゃなくても…」 眩しい笑顔を向けてくる奏太の言葉は嘘偽りなんて一切ないように聞こえた。それが嬉しくて、こそばゆくて照れ隠しに頰をかいて視線を逸らす。 「…なつのそういうとこ、本当好きだわ」 「え、なんて?」 奏太が優しい表情をしながらリストバンドを見てボソッと呟いた言葉を聞き逃してしまって、慌てて聞き返すと奏太は俺を見て微笑んだ。 「これで頑張れるってこと。ありがとな」 ポンッと俺の頭を撫でる奏太の手は優しくて温かかった。うまく躱された気がするが、喜んでくれたならそれで良かったと、胸を撫で下ろした。
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