青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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それから奏太は「コーチに叱られてくるわ〜」と言いながら去っていった。その後ろ姿を見つめながらほっこりした気持ちになっていると、トントンと肩を叩かれる。 「あ、むなか………わっ!!!??おまっ……え゛!?ちょっ…」 「推しが尊すぎてたまりません」 振り返ると、真っ赤なティッシュで鼻を押さえて幸せな顔をしている宗方がいた。他人の趣味にどうこう言いたくはないが、さすがにこれは引いてしまいそうだ。 「大丈夫、なのか…?」 「幸せの結晶さ」 昇天しそうになっている宗方を座席に座らせ、持ってきたウェットティッシュで顔を拭いてやると、宗方はデヘデヘしながら俺の方を見て「おかん最高です」と親指を立てた。そんな宗方の頭をペシっと軽く叩いて「バカヤロウ」と言ってしまったのは許して欲しい。 実は俺が宗方を試合に呼んだのだ。1人で応援するのが心細いのもあったけど、何より宗方が奏太に対して憧れ(?)みたいなものを持ってるからだ。それが恋愛感情なのかはよくわからないが、誘った時には泣いて喜んでいた。 「さっきの山本君を見る限り、1試合目は勝った感じかな?」 「ああ。凄かった!!奏太めちゃめちゃ活躍して格好良くてさ!」 「うんうん!」 それから宗方に奏太の凄いところを熱く語って、一緒に試合を観戦した。選手の表情や激しい攻防を見ていると、これが青春なのかと胸が熱くなった。奏太は他校の女子からの人気が高いらしく、シュートを決める度に歓声が上がっていた。別に羨ましいとか全然思ってる。 「次の試合は準決勝だな!」 「相手は優勝候補の強豪らしいよ」 「奏太のチームなら良い試合になる。だってあんなに頑張って練習してたんだし」 奏太には夏休みなんてものはなかった。朝から晩まで練習して、部活が休みの日でも自主練に明け暮れて。夜ご飯はうちに食べにきたりもするけど、途中で疲れに負けて寝ることだってあった。1年生の頃にレギュラーを勝ち取った実力はその努力からきてるんだ。 だから、その努力が絶対に報われて欲しい。
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