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─ ピーーーッ
準決勝の試合が始まったその時、奏太はベンチに座っていた。
流石は準決勝と言うべきか。どの試合も本当に圧倒されたが、ド初心者の俺でもわかるほどこの試合は格が違う。激しい攻防に選手たちの強い意志が見え隠れしている。
「あっ」
琴ノ宮学園が持っていたボールを手で弾かれ、取られてしまいそれがシュートされてしまった。誰にでもミスはあるが、この失点はあの人にとってどれだけ重いか。
「ドンマーーイ!!!」
「つぎつぎー!」
コート外にいる仲間からの掛け声に顔を上げ、チームメイトに肩を叩かれて励まされ、その瞳に光が戻った。
「すごい……」
コートにいる選手だけが戦っているんじゃない。選手のやる気、仲間の応援、どっちが欠けてもいけない。チームで一つになっているんだ。
─ ピーーーーッ
第2クォーターが終わり、ハーフタイムが取られる。得点は僅差で相手のチームが優勢だ。しかし優勝候補にここまでいい試合を見せているのは贔屓目抜きにしても素晴らしいと思う。
「すごいね!このまま決勝戦までいけちゃいそうな気がするね!」
「うん、俺たちも応援頑張ろう」
─ そして後半戦。
「奏太だ!」
コートには奏太の姿があって、俺を見つけるなりリストバンドを見せつけるように拳を上げ笑った。
「がんばれ、奏太」
そっと呟いた言葉は奏太に届くことはないけれど、言わずにはいられなかった。
相手チームはとても鍛え抜かれていてフィジカルが強く、シュート率がとても高い。そのため得点が追いついてもすぐ差をつけられるが、琴ノ宮学園もチーム力なら負けていない。仲間の動きを推測し信頼してのパスや、掛け声で士気を高めたりなど、それぞれの力をフルに発揮している。
しかし、このままいくとまずい。今のところ同点にはなるが、点数を追い抜くことはない。必死で食らいつくのが精一杯だ。
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