青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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試合時間も残るところあと少しだ。点数差は4点で琴ノ宮学園が押されてしまっている。激戦を繰り広げる中で奏太も点数に貢献しているが、マークされて上手いこと得点に繋がらない。 「よしっ!」 奏太の素早いパスから仲間が相手にフェイントをかけ、ゴールに向かってドリブルしながら進んでいく。ジャンプして放たれたボールは綺麗な曲線を描いてストンとゴールへ入った。 「「「ワァアァァァァッッッッ!!!」」」 「すごいっ!!あと3点取れば逆転だよ!!」 白熱した試合に観客たちも胸を熱くして、どんどん盛り上がっていくのがわかる。俺は緊張と興奮で心臓の鼓動が速くなって、瞬きも忘れるくらい夢中になっていた。しかし残り時間もわずか数十秒。しかも相手チームがボールを持っている不利な状況だ。 「きた!!」 相手チームのシュートが外れ、リングに弾かれたボールを仲間がリバウンドして奏太にパスが回ってきた。相手陣地に攻め込もうとするが、その先には壁が立ちはだかり、パスできる仲間もいない。残り3秒、ここで判断を間違えれば優勝への道は断ち切られる。 「奏太…っ!」 ─ ピーーーーッ ボールが奏太の手から放たれた瞬間、試合終了のブザーが会場に鳴り響いた。ボールは宙を舞い、スローモーションのようにゆっくりゴールへと進んでいく。 これを決めればブザービーターで琴ノ宮学園の勝利だ。俺は呼吸をするのも忘れ、汗が滲んだ手を合わせギュッと握り、神に祈るような気持ちでボールの行き先を見守った。 ─ ガンッ  ダムッ ダムッ ダム…… 「「「ワアァアァアァアァッッ!!!!」」」 「蛇河理古(じゃがりこ)学園、決勝戦進出!!」 ボールはリングに弾かれ、虚しく床に落ちていった。湧き上がる歓声、喜びを分かち合う相手チームの選手やコーチ、悔しさから涙を流す3年生。そんな中、奏太は肩を落としていて仲間が励まそうと背中を叩いても、ずっと立ち尽くし唇を噛んでいた。
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