青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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◇ ◇ ◇ 「いや〜すごかったね!ベスト4ってなかなかなれるもんじゃないよ!」 「うん、本当に言葉にならないくらい感動した。俺も部活とかやっとけば良かったな」 「部活内での恋愛もなかなか良いよね…先輩後輩、コーチと生徒、汗で透けるTシャツ、部室での密会、2人きりの特別指導……なんてさ。腐ふふ……」 あの試合の後は奏太とは会えず終いだった。宗方と試合の素晴らしさについて語り合いながら帰ってきたつもりだが、話が脱線してしまうのはいつものことだ。 「奏太、もう帰ってきてるかな」 夕飯を作りながらふと奏太のことを考える。あの時は泣いていなかったけど、絶対落ち込んでいるだろう。ご褒美になるはずだったタルトが入った冷蔵庫をチラリと振り返って、鍋を温めていた火を止めた。 「凪、カレー作ったから食べといて。俺はちょっと出てくる」 リビングで洗濯物を畳んでいる凪にエプロンを外しながらキッチンから声をかけると、コクリと頷いて答えてくれた。俺は冷蔵庫から箱を取り出し、早々に隣の部屋へと向かった。 ─ ピンポーン 「はーい…って、たっ、高嶋…!」 「忙しい時間にごめん。」 隣の部屋から出てきたのは奏太のルームメイトである木下 冬馬くんだった。俺の姿を見るなり驚いた様子だったが、何かを察して部屋の奥を見ると眉を下げて申し訳なさそうに笑った。 「今は多分1人にしておいた方がいいかも」 「あ……そう、だよな…」 「なんか渡すものでもあった?」 「いや、大丈夫!…奏太には、よろしく伝えておいて」 そこから暫く沈黙が続いたと思ったら、木下くんは「あ〜…」と頭の後ろをかきながら悩んでいるような表情をしていた。 「アンタが行った方が逆に良いのかもな」 「え?」 「俺少し部屋空けるから、やっぱり少し様子見てやって。このままだとあいつパンクしちゃいそうだし」 そう言って木下くんは俺の肩をポンと叩くと「よろしくな」と優しい声で言って、俺の横を通り過ぎていった。
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