青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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玄関でポツンと1人取り残された俺はケーキの箱を抱え、奏太の部屋のドアをジッと見つめた。思い切って出てきたは良いものの、どうやって言葉をかけたら良いのか正解がわからない。 「……でも、俺が落ち込んでたら奏太はきっと迷わず励ましに来てくれる。」 考えたって仕方ない。俺は靴を脱いできちんと揃えてから部屋に上がった。 ─ コンコン 「奏太、俺だけど今入っても良いか?」 ノックをしたが奏太の返事はない。これは入ってきて欲しくないのか、それとも寝てるのか。今日の様子を見る限り前者だろうが、このまま帰るわけにもいかない。俺はドアノブにそっと触れて深呼吸を一つした。 ─ ガチャッ 「わっっ!??」 「ハハハッ…ビックリしたか?なつ」 1人でに扉が開いたと思ったら、そこには奏太がいて、いつもと変わらないような眩しい笑顔を俺に向けてきた。 「え……」 「ごめん、連絡も何もしなくて。心配してきてくれたんだよな。俺なら大丈夫だ。悔しいけど、俺が練習不足だったからさ」 いつもよりも饒舌に話す奏太は俺が話す隙を与えない。それは励ましの言葉を拒否してるようで、俺は奏太の笑顔を目の前にして言葉に詰まってしまった。 「もっと練習頑張らなきゃな。先輩たちの分まで……………って、え……なつ?」 「……っ、ぅ……」 奏太の笑顔を見て初めて涙が溢れた。こんなに頑張っている人の前で涙なんて流しちゃいけないのに、我慢できなかった。ポロポロと溢れる涙は止まることを知らなくて、困らせるって分かってるのに涙と嗚咽が止まらない 「そうたっ……おまえ…っ、なんで泣かないんだよ……なんで笑ってんだよ…ッく…」 「なつ?」 「悔しいくせに……っ!本当は泣きたいくせに!俺はお前が一生懸命頑張ってたこと…しってるんだ!」 俺だって悔しかったんだ。あんなに頑張っていた奏太の努力が報われないなんて。他人の俺が思うくらいなんだから当の本人はもっともっと悔しい筈だ。泣きたくて、自分への怒りではらわたが煮えくり返りそうで、叫びたくて、でも必死にそれらを抑えたこの笑顔が俺にとっては悲しかったんだ。
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