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「……だろ…」
「え?……っ」
ボソッと呟いた奏太の声に顔を上げると、奏太は眉間にしわを寄せて綺麗な涙を流していた。
「格好悪いところ見せられるわけない、だろ…」
「……バカ!お前はずっと…最後まで格好良かった!!」
「先輩達の最後の試合で……っ、なのに最後にあんなミス…ありえねぇっ……くっ、ぅ……」
歯を食いしばって肩を震わせる奏太の姿に俺までまた涙が溢れてきて、ケーキの箱を置いてその体を両手でギュッと抱きしめた。すると奏太も俺の背中に腕を回してきて、優しく体を包んできた。
「絶対後悔しないように毎日練習して……なのにっ、負けたらやっぱ悔しくて…」
「うん、うん……」
俺たちはしばらくそのまま抱き合いながら男2人で泣き続けた。
◇ ◇ ◇
「あーー……なんかスッキリした」
「我慢は良くないからな」
2人並んでベッドに腰掛け、お互いの顔を見て吹き出すように笑った。なんで俺が泣いてるのか意味わからないし、お互い目真っ赤で、何が面白いのかわからないけど、なんかおかしくて。奏太の笑った顔を見れば心からの笑顔で、それが嬉しくてまた涙が出そうになった。
「あ、そうだ!頑張ったご褒美、俺考えてて…」
「え?でもあれは決勝で勝ったらって」
「俺が良いって言ってんだから良いんだよ!ちょっと目瞑って」
「えっ……わ、わかった」
奏太が少しソワソワしながら目を瞑ったのを確認して俺はベッドから立ち上がってケーキの箱を取りに行く。奏太が喜ぶ顔を想像してニヤけてしまうのを抑えながらケーキの箱を開けて、近くまで持っていく。
「奏太、目開けて」
「……おう。」
心なしか顔を赤らめている奏太に声をかけると、奏太は恐る恐るゆっくりと目を開いた。
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