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「お……」
「じゃっじゃじゃーん!フルーツタルト!!」
「おお!」
目を開けた奏太はご褒美が思っていたものと違ったのかパチパチと瞬きを繰り返していたが、俺が盛大に紹介すると表情を輝かせ拍手をしてくれた。
「これ生地から作ったんだ」
「へぇ〜めちゃくちゃ美味そう」
「でしょ?食べてみて」
そう言って使い捨てのフォークを手渡そうとするが、なかなか受け取ってもらえない。
「奏太?」
「食べさせて」
「へ?」
不思議に思って名前を呼ぶと、奏太は悪戯っ子のような笑みを浮かべながら俺を見上げ衝撃発言を投下した。
「あー」
「えっ、えっ……」
戸惑っていれば奏太は俺を急かすようにあんぐり口を開けてきて、慌てて袋を開けフォークを取り出す。ケーキを一口分に切ってフォークの上に乗せてみるが、恥ずかしさで手がプルプルしてしまう。
「あーん」
「〜っ!!なんでこんな恥ずかしいことしなきゃいけないんだ!」
「ご褒美、くれんじゃないの?」
火でも噴いてるかのように顔が熱くなって恥ずかしさが爆発し、フォークをケーキの箱に雑に置く。俺は純粋にケーキを食べて欲しかっただけなのに、この状況を楽しんでいる奏太が恨めしい。
「どこがご褒美なんだ!」
「俺にとってはご褒美なの。つーか、そんな恥ずかしがって俺のこと意識してんの?」
「は、はぁっ!?」
確かに友達にアーンするだけでこんなに恥ずかしがってるのは俺だけなのかもしれない。奏太がニヤニヤしてるのが気に入らなくてもう一度フォークを握った。
「別に、このくらいできるし!あーん!」
「あー…」
思い切って奏太の口にケーキを突っ込むと奏太は咀嚼した後、口の端についたカスタードクリームをペロリと舐めた。
「美味い。」
「〜〜〜っ、なんなんだよお前は〜」
プシュ〜っと体から空気が抜けていくようにして座り込むと、奏太は俺の頭を撫でて「ありがとう」と呟いた。さっきまで憎らしかったのに奏太の笑顔を見るとどうでも良くなって、「美味い」って言葉に嬉しくなって笑みが溢れてしまう。
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