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山本 奏太side
「は、はい………あーん…」
耳まで真っ赤にして恥ずかしさに耐えながら俺の口にケーキを運ぶなつが可愛くて、頬が緩みっぱなしになってしまう。
さっきまで自分のミスで試合に負けてしまったことを悔やんでいて、俺には涙を流す資格なんてないんだと思い込んでいた。でも、なつが来て俺と一緒に涙を流してくれて、気持ちがすごく楽になった。なつはどんどん俺の心を占めていって、今では自分でも計り知れないくらい好きな気持ちが募ってしまっている。
「美味しい?」
「ん、美味い」
俺の隣に座って顔を覗き込みながらケーキの感想を聞いて、俺が答えると天使のような笑みを見せてくるなつ。アーンするだけであんなに恥ずかしがってちょっとでも俺のこと意識してくれてるのかなって思うと嬉しくて、ほんとに何なんだこの可愛い生物は。俺の目にだけそう写っているのかもしれないけど、こんな可愛い反応をされて理性を保てている俺をどうか讃えてほしい。
なつの肩に頭をコトンと預けると、なつの匂いも体温も近くに感じてドキドキする。こんな感覚は初めてで、これが恋じゃなければ何だと言うのだろう。
「すk……」
「酢?酢は入れてないけど」
思わず″好き″と言ってしまいそうになこの空気感。この想いを伝えてしまえばこの関係も全て崩れてしまうかもしれないというのに。いや、その可能性の方がダントツで高い………自分で言ってて悲しくなるくらいには。
不思議に思ったなつが俺の顔を覗き込んできて、パチリと目が合う。吸い込まれそうな綺麗な瞳と無防備な唇が俺を誘惑してくる。手を伸ばして肩に触れ、ストンと布団に押し倒すと、なつの瞳が大きく開かれた。
このまま部屋に縛り付けてしまおうか。
すごくぶっ飛んだ考えが浮かんでは冷静な自分がそれを止める。
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