青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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「……うん。そうやって向き合ってくれるところが、好き」 顔を横に向けて、唇を耳元に近づけて囁いた。今の俺はきっと、みっともなく顔を緩ませているに違いない。 「ぁ、の……えっと、だから……」 視界いっぱいになつの耳はほんのり赤く染まっていて可愛いし、なつの心臓の音が俺にまで伝わってきて、嬉しいのと高揚感でいっぱいになる。 「っ!?」 「わっ………!?」 ふぅ、と耳に吐息をかけてみるとビクッと反応したなつが向きを変えて起き上がり、ぐるんと視界が一気に変わる。 今度はむしろ俺がベッドに押し倒されているような構図になっていて、なつは真っ赤な顔のまま俺を見下ろしていた。 「そ、そういうのは付き合ってからじゃないと、ゆゆゆっ、許しません!!」 なつが真剣に訴えてきているところ本当に申し訳ないが、手を恋人繋ぎしながら俺の腰に跨っているその眺めが騎乗のスタイルに見えているのはわかっているのだろうか。絶景すぎてムクムクと俺の息子が反応してしまう。 「……ぇ、と当たってるこの硬いものは一体……」 「それ、聞く……?」 目を逸らしながら答えるとなつはパッと立ち上がって、どこに目を向ければいいかわからずパニックになっていた。 「しっ、失礼しゅました!」 俺が送る暇もなくドアを勢いよく開けてバタバタと去っていくなつ。1人残された俺は体をゆっくり起こして盛大にため息を吐き、右手で頭を抱えた。 「格好悪すぎるだろ……」 我慢出来ずにキスして、言い訳みたいな告白になってしまい、挙げ句の果てに羞恥を晒してしまうなんて全然らしくない。なつに対してだけは誠実にいたかったのに。 「おい、高嶋が顔真っ赤にして出て行ったけど大丈夫か?」 「……もう何も聞かないでくれ」 何処かへ行っていたと思っていた同居人の冬馬がドアを少しだけ開けて、覗いてくる。心配してるのか面白がっているのか、冬馬の場合は両者だろう。 「…………ナイスムッツリ!」 「うるさい、出てけ」 そう言って冬馬は扉を閉めて去っていった。俺のどこを見てそんなこと言ったのかは聞かないでおこう。 「次どんな顔してなつに会えばいいんだよ……」 山本 奏太side end……
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