青春とは、汗と涙とパンケーキだ

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─ チュン チュン 「眠れなかった……」 小鳥のさえずりが聞こえ、窓の方に目を向けるとカーテンの隙間から日差しが差し込んでいた。とても良い朝の筈なのに俺は天井を見上げたまま小さく溜息を吐く。 目を瞑って思い出すのは奏太の真剣な表情と言葉、それから温もりだ。何度も思い返しては恥ずかしくなって、その記憶をかき消すように声を上げた。だけど忘れられるはずなくて、目を閉じるたび…いや、一晩中そのことだけを考えていた。 「俺のこと、いつから……」 奏太のことは親友だと思ってた。 もちろん、奏太だって同じ気持ちだと思っていたけど、俺は全然奏太のことを理解できていなかった。いつからこのことで苦しんでいたのだろうか。あんな縋るようなか細い声は初めて聞いた。 俺は女の子が好き(な筈)だし、男同士の恋愛に興味もなかった。だけど今の俺は周りの素敵男子にドキドキしたり、昨日もあんなに取り乱してしまった。最後のあれ(モッコリ事件)はパニックにならない方がおかしいけど、不思議と嫌悪感っていうより恥ずかしさの方が勝っていた。 「俺は男もいける……のか…?」 布団の中に潜りながら呟くと、頭の中に身近な男たちの顔が思い浮かんでくる。そして最後には一ノ瀬や奏太とのキスを思い出して、「結構やることやってるな」と冷静な自分がツッコミを入れてくる。 「いや、いやいやいやいやいやいや……違う、よな?」 バッと布団から顔を出して自問自答しながら首を傾げる。どんなに考えたって答えなんて出てこなくて、ずっとこの繰り返しだ。 「今日は寮長とパンケーキなんだけど、どうしよう…」 こんな心境のまま寮長とパンケーキなんて行ったら、心ここにあらずで心配をかけてしまうかも知れない。しかも相手は魔性の男である寮長だ。何かをきっかけに目覚めてしまう可能性があってもおかしくない。
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