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「わっ!?」
寮長にお断りの連絡を入れようと文字を打っていると本人から連絡が来て、思わず自分の顔にスマホを落としてしまった。
「いったた……」
赤くなったであろう鼻を撫でながら寮長からの連絡を確認すると、今日のお出掛けを楽しみにしているという内容だった。直前までドタキャンしようと思っていた自分を反省し、寮長へ送ろうと思っていた文章を一文字ずつ消去していく。
「寮長は経験豊富だし、逆にこれを相談するっていうのもアリだよな」
無理やりに自分を納得させ、ベッドから起き上がった。
◇ ◇ ◇
「あっ!高嶋くーん!待ってたよ」
「おはようございます。お待たせしました!」
寮の前には私服姿の寮長が待っていて、俺は小走りで隣に並んだ。
「私服姿、なんか新鮮だな。すごく似合ってる」
「ありがとうございます…」
褒められ慣れていない俺は急に恥ずかしくなって、気を紛らわせるために髪を耳にかけた。
柔らかく微笑む寮長の方こそ、私服姿が似合っている。ユニ○ロでも売っていそうなシンプルな服装だが、触り心地の良さそうな素材が使われていて気品が溢れているこの感じ。顔が良いというのも大前提にあるが、お洒落にかなり気を遣っているのだろう。
「車呼んであるから、行こうか」
「えっ、あ…はい!」
流石は金持ち、臨時で出ているバスには乗らず自分で手配した車を呼んでいるとは。いつも普通に関わっているからか、有名企業の息子やら有名人の子どもやらってことを忘れてしまう。
「ここのパンケーキは苺が乗ってるのが有名なんだって」
「え〜!美味しそう!!!俺、苺って大好きなんですよね」
「へぇ、大好きなんだ?」
「はい!大好きです!」
真っ白な高級車の中で隣に座りながら一緒に雑誌を読んでいれば、ワクワクでいっぱいになってきて、さっきまで一緒に行こうか悩んでいたことなんてサッパリ忘れていた。
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