青春とは、汗と涙とパンケーキだ

30/37
前へ
/565ページ
次へ
パンケーキ屋さんに着いたのはお昼前で丁度混んでいる時間だったが、寮長が予約をしてくれていたおかげでスムーズに入店することができた。美形が隣にいるというだけで視線が痛いのに男2人でパンケーキ屋に来たとなると尚更注目を浴びて恥ずかしい。 「どっちも美味しそう……」 メニュー表と睨めっこが始まって5分、俺はやっとのことで注文したいものを2つに絞ることができた。 「ふふ、ゆっくり悩んでいいよ。ちなみにどれと迷ってるの?」 「このいちごマスカルポーネのやつと、バナナとマカダミアナッツにキャラメルソースがかかったこのパンケーキです」 メニュー表を一緒に見ると寮長との距離が一気に縮まって、ふわりと良い匂いが鼻をかすめた。チラリと寮長を盗み見ると透き通るような白さの肌にスッと鼻筋が通っている整った顔。普段もそうだが私服だともっと大人っぽく見えて、学年が1つ違いだということを忘れてしまいそうだ。 「何かついてる?」 「あっ、いえ……」 視線に気付かれてしまい、いつの間にやら頬杖をついて俺のことを上目遣いで見ている寮長。透き通ったビー玉のような瞳に吸い込まれてしまいそうで咄嗟に目を逸らした。 「僕も丁度このキャラメル気になってたから半分こにしよっか。」 寮長は微笑んで俺を見つめたあと、手を挙げて店員を呼び注文してくれた。男子校に咲く一輪の花のように例えられているくらいの美人だけど、スマートで俺なんかよりずっと男らしい。 「高嶋くん、何かあったの?」 「へ?」 「ずーっと難しい顔してるよ」 そう言われてハッとする。そういえば今日は楽しい日のはずなのに全然笑っていない。笑っていたとしても無意識のうちにしているヘタクソな愛想笑いだ。楽しみにしていてくれた寮長に申し訳なさを感じながらも、心のモヤモヤは拭いきれない。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5513人が本棚に入れています
本棚に追加