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「俺で良かったら聞くし、言いたくなかったら、これから高嶋くんが本気で笑えるまで帰れまテンしようと思ってるんだけどどう思う?」
俺が謝るより前に寮長は口を開いて、優しく語りかけてくれた。
「じゃあ、どっちもお願いします。」
「え?本当に?話のセンスはちょっと自信ないかもなぁ…こちょこちょもアリ?」
「なしです!」
もうこの時点で笑ってしまってるから試合終了なんだけど、それは言わないでおく。
「あ、パンケーキきた!」
「高嶋くんの笑顔先にパンケーキにとられた〜」
「何言ってるんですか、もう。」
いつもの調子を取り戻した俺は早速いちごのパンケーキを食べてみる。生地はふわふわで、生クリームは甘ったる過ぎずにいくらでも食べられそうだ。そこに苺のつぶつぶ感と甘酸っぱいソースが絡み合って美味しすぎる。
「ふふ、幸せそうな顔」
「寮長もほら、食べてみてくださいよ」
この美味しさを共有して欲しくて、生地と生クリームと苺を絶妙なバランスで盛り付け、フォークで刺して寮長の口元まで持っていく。寮長が目を丸くて驚いた顔を見せた瞬間、自分の過ちに気付いた。手を引っ込めようとした時には寮長の手によって手首を引かれていて、気づいたらパクリとパンケーキを食べられてしまっていた。
「「「キャアッ」」」
周りの女性たちが黄色い声を上げるのと同時に俺の体はサーッと血の気が引いていく。
寮長は慣れているのか気にしていないのか、口の端についたクリームをペロリと舐めて微笑んだ。
「美味しかったよ、御馳走様。」
「〜〜っ、不覚だった…。寮長もそこは空気を読んでくださいよ」
「空気読んだつもりだよ。周りの女の子たちもそれを期待してたし、俺だってそうしたかったし。」
これこそ魔性の男だ。こういうセリフが校内の男たちを無意識に落としているに違いない。俺がウブな女の子だったら目がハートになっているだろう。
俺は顔が熱くなって、視線が気にならなくなるまでしばらく顔を上げられなかった。
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