5514人が本棚に入れています
本棚に追加
隣を見れば一ノ瀬もくだらないと思っているのか興味なさそうに頬杖をついている。すると俺の視線に気づいたのか目が合ってしまった。一ノ瀬から目を逸らす気はないらしく、しばらく見つめ合ったあと俺が耐えられなくなって視線を外した。
あんな脅され方をしていたのに、今では助けてくれる心強い存在で、他愛もない話もない話をする関係だなんて不思議だ。相変わらず嫌な奴だけど、週2で一ノ瀬の部屋に行き料理を作ったりなど通い妻のようなことをしている。
ただ、たまに変な反応したり、ドキッとすることを言ってきたり……あのキスの意味、とか…一ノ瀬の顔を見ると余計なことを考えてしまう。
「他に意見はあるか?」
クラスのほとんどが意見を出し終えた時、おずおずと遠慮がちに手を挙げる倫太郎の姿があった。倫太郎なら良い案を出してくれそうだと安心しながら耳を傾ける。
「じゃあ宗方」
「女装喫茶とかも捨てがたいですけど、ホストクラブ…なんてどうでしょうか?」
俺の淡い期待は一瞬にして砕かれてしまった。
確かに一ノ瀬や凪など綺麗どころが揃っているから人気になるのは容易に想像がつく。
「………高嶋は?」
俺が意見を言っていないと気づいたのか矢野がわざわざ俺を名指ししてきた。一ノ瀬や凪だって発言していない筈なのに、もしや心の声がだだ漏れだったのだろうか。
「……女装とかより、和装の方がいいです。焼きそばとか、綿あめとか売って縁日っぽい感じとか…」
生徒たちの反応もなかなか良好で我ながら良い考えだと鼻を高くしていると、隣から鼻で笑う声が聞こえてきて一ノ瀬をジロリと睨んだ。
「多分、その意見は通らないと思うよ」
「なんでだよ」
「考えたらわかるでしょ」
「…………そ」
「おいそこ、無駄口叩くな。多数決とるぞ」
ムキになって言い返そうとしたときには矢野に注意されてしまい、反論は出来ず終いで会話を遮られてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!