猫被りくんは甘え下手?

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◇ ◇ ◇ 「まさか僕の案が通るなんて思ってもみなかったよ!!夏輝くんのホスト姿楽しみだなぁ〜!」 帰りのホームルームが終わると、喜びを抑えきれない倫太郎がゴキブリのように素早く俺のところまで来て鼻高々にそう言った。俺の案は一ノ瀬と凪と俺の3票しか入らなかったから一瞬喧嘩を売られたのかと思って偽不良魂に火がついたが、それ以上にホストになることが嫌すぎて拒絶の言葉を優先する。 「俺は絶対裏方が良い。ホスト断固拒否!」 「ええ〜!山本くんに見せたいのに〜」 「はっ!?……な、なんでそこで奏太の名前が出るんだよ!」 「え………なんで顔赤くするの?」 奏太の名前を聞いてわかりやすく反応してしまい、倫太郎は真顔になって俺の顔を覗き込んできた。真顔なのに目はキラキラと輝いていて、謎に期待の眼差しを向けられている。 「もしかして〜好きになっちゃった?それとも告白された?いやいや、それとももっと凄いことしたのかな!!」 「ばっ、変なこと言うなばか!声がでかい」 俺に背を向けニシシと笑う倫太郎を後ろからホールドして、右手で口を塞ぐ。ジタバタと暴れる宗方のツムジを見下ろしてため息を吐き、チラリと一ノ瀬に視線を向けた。 一ノ瀬は素知らぬ顔で鞄を持って立ち上がり教室を出て行った。変なことを聞かれていないようでホッと胸を撫で下ろす。 「ふぐっ、んン……む〜!」 「あ、悪い。」 「夏輝くん、図星突かれたからってそれはないよ……もう。でも幸せならそれでオッケーです!」 涙目で情に訴えてきたかと思えば、鼻血を垂らしながら良い笑顔を向けて親指を立てた。倫太郎のこのテンションが通常運転だと知ったときは衝撃だったが、なんだか最初からこんな感じだった気がして違和感はなかった。どうやら男同士の絡みが好きなようだから、俺が奏太に告白されたと知ったら卒倒するだろうな。
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