猫被りくんは甘え下手?

6/22
前へ
/565ページ
次へ
着いたのは1年の教室。放課後ということもあり教室の中は閑散としていた。 「ごめん、ちょっといい?」 机を挟んで椅子に座り会話をしていた2人組に話しかけると、ギョッとした顔で見られて申し訳なくなる。 「あ、あ…高嶋先輩ですよね…」 「うん、突然ごめんね。」 「やっば、めっちゃ格好いい!」 「おい!宗介、お前コロされるぞ!」 「はぁ?圭ちゃんは馬鹿だなぁ。高嶋先輩は前まで悪魔に操られてただけなんだって。」 「馬鹿はどっちだ!そんな噂誰が信じるんだよ!」 2人には悪いがヒソヒソ声が丸聞こえだ。本当に俺が怖い不良だったなら瞬殺だっただろう。 圭ちゃんと呼ばれた青髪の生徒は俺を怖がっている感じで、宗介と呼ばれた赤髪の彼は嬉しそうに俺を見つめてくれている。 「何かご用ですか?」 「うん。槙田ってこのクラスだよな?」 「あ〜あの無口な子ですか?」 「無口?いや、どっちかっていうと口煩いっていうか…」 宗介くんが俺の対応をしているのを圭ちゃんは少し心配そうに一歩後ろから見つめていた。 「口煩い…?そんなイメージはないな〜。どっちかっていうと一匹狼……いや、一匹兎って感じですね。」  「人違い…かなぁ」 「あの……槙田 悠里って奴ならこのクラスですよ。」 「あ!そうそう、そんな名前だった。圭ちゃんよく覚えてるな〜やるぅ!」 様子を窺うようにしていた圭ちゃんがようやく宗介くんの背中から顔を出して教えてくれた。どうやら俺たちが知る槙田とクラスでの槙田は全然違うみたいだ。 「でも、今日は確か病欠で…」 「病欠!?」 「ヒッ」 俺が驚いて声を上げると、圭ちゃんはサッと宗介くんの背中へ隠れてしまった。男前な顔をしているのに臆病な性格なのがハムスターみたいで可愛くて逆に好感を持てる。 「圭ちゃん怖がりなんですみません。許してあげてください。」 「宗介が怖いもの知らずなだけだろ!」 「ハハ…慣れてるから大丈夫。」 その後、お礼として槙田から前にもらったチョコレートを宗介くんに渡すと、圭ちゃんが背中からひょっこり顔を出してきて可愛かった。 ハムスターが飼いたくなった。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5514人が本棚に入れています
本棚に追加