猫被りくんは甘え下手?

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槙田が病欠と聞きつけた俺は自分の部屋へ戻り、鞄に薬や食材など必要そうなものを入れていく。戻った時には凪は部屋にいなかった。最近1人でどこかへ行ってしまうことが多くなり、少し寂しく感じているのは秘密だ。 槙田の部屋に行ったらお節介だと追い出されそうだが、アイツは菓子パンとか甘いジュースだとか偏食なところがあるから心配だ。 食材や冷えピタなど必要なものを持って槙田の部屋へ向かっていると、一ノ瀬が熱を出した時のことを思い出す。あれは確か新歓の次の日で、せっかくお粥を作ったり看病してやったというのに一ノ瀬の態度は最悪だった。彼らしいと言えば彼らしいが。 「ふっ…」 あの時のことを思い出してクスッと笑みが溢れる。素直に礼を言えず菓子折を持ってくるところは、育ちの良い子どもっぽくて少し可愛げがある。 ─ ピンポーン 槙田の部屋の前に着いた俺は真っ先にインターホンを押した。その瞬間、先に連絡しておいた方が良かったと後悔したが、押してしまったから仕方がない。 ─ ガチャ 「………はい」 扉が開いた先にいた槙田はゆる可愛いクマのイラストが所々についているベージュ色のパジャマ姿だった。髪もボサッとしていて普段かけない眼鏡もしているから、なんだか新鮮だ。少し怠げな様子で視線は床の方に向いていて、俺に気付く様子はない。 「体調大丈夫か?」 「は……?……はっ!?!?」 槙田は視線を上げ俺を見た瞬間、みるみるうちに顔を真っ赤にして理解が追いついていないようだった。 「ちょっ…ちょっと待ってて!!」 バタンッと大きな音を立てて扉を閉めると、扉の向こうからガタガタッ、ガシャンッガシャンッ、バタバタッと騒がしい音が聞こえてきた。 「お、お待たせっ」 息を切らした槙田が扉に凭れるように出てきた時には、この部屋の中で何が起こったのか心配しかなかった。
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