猫被りくんは甘え下手?

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よく見るとさっきまでボサっとしていた髪はサラサラになっていて、いつもの槙田を少しだけ取り戻していた。 「ところで、何しにきたの?」 「槙田が病欠って聞いたから、様子見に来た」 「それはクーラーを付けっぱなしで寝ちゃって、別に熱とかは…」 そう言う槙田の頬はピンク色に染まっていて、俺は手を伸ばし額に触れる。槙田は小動物のようにビクッと体を揺らし、俺の顔を上目遣いで見上げてきた。ウルウルとした大きな瞳に見つめられると更に守ってあげたい欲がかき立てられる。 「…ほら、やっぱり少し熱がありそうだ。ご飯は食べたか?」 「ま、まだだけど……」 「ちょっとだけ部屋に上がっても良いか?」 「………うん。」 部屋に上がるとフローラルの良い匂いがした。間接照明やお洒落な小物、花瓶には綺麗な花が飾ってあって、とても清潔感のある部屋だ。 同居人の部屋であろうドアの向こうからは複数人の声がして、病人がいるのに騒がしいなと眉間に皺を寄せる。 「誰かいるのか?」 「なんか同居人も風邪っぽくて友達がお見舞いに来てるみたい。はい、ここが僕の部屋。」 「へぇ…あ、お邪魔します。」 槙田の個人部屋に入ると、くまや羊の可愛らしいぬいぐるみがいくつか置いてあり、白と木製の家具を基調としたお洒落な空間だった。恐らく共同部屋のインテリアも槙田のセンスで置いてあるのだろう。 「そういえば誰から病欠って聞いたの?」 「お前のクラスメイトの宗介くんと圭ちゃんって奴に聞いた。」 「は……わざわざクラスまで行ったとか馬鹿みたい。」 俯いた槙田が髪を耳にかけると、その耳が赤く染まっているのが目に入る。 「また熱が上がったみたいだな。横になった方がいい。」 「これは……違うし。」 槙田はムスッとした顔をしながら真っ白な布団の中に潜り込むと、掛け布団からヒョコッと目だけを覗かせる。俺はベッドの横に座り、頬杖をついて槙田の顔を見下ろした。 「なんか食いたいもんあるか?」 「…オムライス」 「意外とガッツリしたもの食べたいんだな」 「ケチャップでハートは必須だからね。」 「わかったわかった。愛情込めて作ってやる。キッチンと食材少し借りるぞ。」 「……ばか。」 何かブツブツ言っていた気もするが、お腹を空かせている槙田のために美味しいオムライスを作ることにした。
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