猫被りくんは甘え下手?

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槙田 悠里side 生まれてきてからこれまで周りに可愛い可愛いと言われて育てられてきた。もちろん自分でもそう思うし、これからもそうやって生きて行くんだと思っている。 でも、こんな僕だからずっと格好良い人に憧れを抱いていた。外見もそうだけど男はやっぱり強いものだから、喧嘩の強さとかそういう物理的な強さに魅力を感じていたのだ。 そんな強い人をどんな形であれ自分が支配する瞬間が好きで、喧嘩が強いと聞けば自分の可愛さの武器をフルに使って墜としていた。 センパイの時だってそう。強いって聞いて告白したら、デレデレはするくせに全然靡いてくれなくて次のターゲットに乗り換えたんだっけ。でも一ノ瀬先輩の方が脈無しで、夏休み前なんかは「僕を理由にして夏輝に会いに来るのやめなよ気持ち悪い。はっきり言って迷惑。」って面倒なお説教食らったのを覚えている。 別に好きになるつもりなんかこれっぽちもなかったのに。日を追うごとに先輩の存在が僕の中で大きくなっていくのが自分でもわかってて、だけど信じたくなかった。僕にとって好きになるってことは負けを認めるようなものだから。 助けてくれる姿が格好良くて、その背中が頼もしくて、先輩は僕にとってヒーローみたいなもので。ただそれだけで良かったのに、可愛い笑顔、誰にでも優しい姿、色んな一面を見つけていく度にどんどん欲張りになっていく。 いつからだっただろう。先輩が言ってくれる″可愛い″は他のどんな人とも違って聞こえて、特別になったのは。 それなのに…… 「でもさ。他の誰かになんて言われようと自分を曲げねぇっていうか、芯が強いところが格好良いんだよな、お前は。」 センパイに″格好良い″と言われてこんなにも嬉しいだなんて、こんな感情知らなかった。知らなくて良かった……─
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