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「俺も小さい頃、熱出すとこうやって母さんに抱き締めてもらってた。」
「………は?」
「病気の時って人肌恋しくなるよな、わかる。」
抱きしめられて幸せオーラに包まれている時、ムードをブチ破る音が聞こえた。センパイって本当に空気読めない鈍感野郎だなぁと思いながら大きな溜息を吐く。
「あのさぁ、センパイって僕のことかわいいウサギさんだと思ってる?」
僕の言葉を聞いてセンパイが顔をあげようとしたから、僕は思い切りギュウウゥッと抱きしめ返してそれを阻止する。
「だったら残念、僕はこわぁいオオカミさんだからね」
拘束を緩め、コツンと額を合わせて黒い笑みを見せる。しかしセンパイはきょとん顔で、僕を男として全然意識してくれていない…というより言葉の意味を理解していない。
完全にスイッチが入った僕はセンパイの頰と後頭部を包んで唇をゆっくり近づける。
(ここまでしても警戒ゼロなのは……)
「センパイが悪いんだからね?」
「え…─」
センパイが話す隙を与えずにその唇に齧り付いた。
「んっ、んン…!?」
柔らかい唇を味わうように何度も吸い付いつくと、センパイはくぐもった声を漏らす。チュ、チュッと音を立てると目の前の頬が真っ赤に染め上がる。
ようやく状況を理解したセンパイは僕の背中の服を引っ張って抵抗してきた。さすがは鍛えてるだけあって強いけど、僕をウサギさんだと思ってるからか少し加減してくれていて本当にお馬鹿さん。
「ほら、口開けて」
「ばっ…」
「いい子」
薄ら開いた唇を見逃さず、つかさず頬を包んでいた右手の親指を歯の間に入れ込んだ。不意を突かれて驚いているが僕の指だとわかっているからか思い切り噛むことができないのだろう。困惑した表情が見て取れる。
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