猫被りくんは甘え下手?

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「……で?本当はなにがあった?」 部屋に帰ってきた俺は凪にリビングのソファまで運んでもらった。ストンと凪が俺の隣に腰掛け、俺の顔を覗き込むようにして聞いてきた。相変わらず無表情だが、なんかいつもと違って目が本気な感じだ。 「なに、って……」 「ギックリ腰なんて嘘だろ」 「は、……いや…」 図星を突かれた俺は上手く受け流すことが出来ず固まってしまう。凪は「わかりやす」と呟き、鬱陶しそうに髪をかき上げた。 「ごめん」 「なんで謝んの」 「いや、嘘ついたから…」 「別にそれは気にしてない」 「じゃあ、」 「俺のいない間に何されてんの」 凪は不貞腐れているような、拗ねているような表情で睫毛を伏せた。無表情でなかなか他人に心の内を見せようとしない凪だが、たまにこうして独占欲みたいなのを見せてくる。誰にも懐かない犬に懐かれたみたいでちょっと可愛いと思ってしまう。 「なにニヤついてんの」 「なんか可愛くて」 「……、俺のことペットとでも思ってる?」 はは、と眉を下げ笑うと、凪はむっと眉間に皺を寄せた。はぁ、と溜息を吐いた凪はソファの背凭れにポスンと倒れ込むようにして背を預け話を切り出す。 「で?」 「キスをされて腰抜けまし、た……」 「警戒心なさすぎ、無防備すぎ、ガード緩い、チョロすぎ。ここがどんな学園かわかってんの?」 「耳が痛い」 耳を塞ぎたくなるような言葉にぐうの音も出ない。目をぐっと瞑って反省していると、顎をスルリと撫でられてギョッと目を見開いた。 「消毒するか?」 「へ……?」 それって少女漫画とかでよく聞く台詞じゃないか、なんて思いつつ唇を手で押さえる。すると俺の額に凪の指が伸びてきた。 「い゛っ」 「なに想像してんの、えっち」 「えっちって…!!…ん、んん?」 デコピンと悪口を食らった俺は反論しようとして、固形の何かを口に突っ込まれる。瞬きを繰り返しながら頭を畝り、口の中でコロコロ転がしてみると独特な風味が鼻を抜けた。 「ハッカ飴」 「え…消毒ってこれ?」 「そ。1番スースーするやつ」 消毒と言われてキスを想像するなんて、どこまで煩悩に塗れてしまったのだろうか。
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