ヤクザ教師は隠したい

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◇ ◇ ◇ 「なつー」 「…っ!!」 帰り支度を済ませ席から立とうとしていると、教室のドアの方から声がして顔をパッと上げた。俺のことをなつと呼ぶ人は1人しかいない。 「そ、奏太…」 「部活休みだから一緒帰ろうぜー」 「う、ん」 あれからというもの奏太は普段通り接してくれている。けれど俺はそんな風にはいかなくて、奏太を見たり、声を聞くたびにあの告白とキスがフラッシュバックして平常心ではいられない。 「せーんぱいっ」 「まきっ、た…」 今度は槙田が俺の背中に抱きついてきて、心臓が小さく跳ねた。 最近はあの3人組と一緒にお昼を食べているみたいだが、帰りは必ずと言っていいほど俺のところに来る。槙田を見ると唇に目がいってしまうほど、あの時のキスが忘れられなくて困っている。 最近は心をザワザワさせる人が多くてなんだか落ち着かない。好意を向けられること自体は嬉しいけれど、気まずい気持ちになってしまうことも確かな訳で。俺の平凡なスクールライフがこんな形で脅かされるとは思ってもみなかった。 「クールな美少年、爽やかなスポーツマン、可愛い男の娘…完璧な総受けの図だ。ドSキャラっぽい一ノ瀬くんとは何やら秘密の関係っぽいし、チャラ男の副会長は夏輝くんにガチ恋してるし、寮長と2人きりでいるところも前に目撃したし、色気魔神の風紀委員長との交流もある。惜しいのが腐男子が僕ってところかな……。やっぱり腐男子と不良…総長だと尚良しは捨て難い。あとは担任も攻略して欲しいところなんだよなぁ、なんて。フフフフ腐。」 少し距離をとった倫太郎が自分の指でカメラのフレームを作り、何やらぶつぶつ呟いていた。どうやら俺、凪、奏太、槙田を枠の中に収めて楽しんでいるらしい。 「あぁ、あと生徒会長──」 「「「キャアァアアアァア!!」」」 放課後だというのに廊下の方から悲鳴のような叫び声が聞こえてきて思わず耳を押さえた。
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