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「高嶋くんはここのクラスかな?」
恐らく廊下が騒がしくなった元凶と思われる人物がドアからヒョコッと顔を出して教室を覗いた。その顔には見覚えがあって、名前を思い出すより先に役職名が頭に浮かんだ。
「え!?まさかの生徒会長キタ!!!!?」
「あ!いたいた!」
「天下の生徒会長がなつに何の用ですか?」
倫太郎が興奮しているのを横目に見ていると、奏太が生徒会長の視線を遮るように俺の前に立って話しかける。
「いきなりごめんね。実は文化祭のイベントのことで話があるんだ。」
「イベント…?」
「生徒会主催のイベントなんだけど……ここじゃネタバレになっちゃうから、2人で話したいんだ。」
「別にいいですけど、なんで俺?」
そう、疑問はそこだ。
いくら俺が生徒会メンバーと面識があるとは言え、生徒会主催のイベントを手伝う程のよしみでもない。しかも同じクラスである一ノ瀬ではなく生徒会長直々に来るっていうところが引っかかる。
「君にしか頼めないことだからだよ」
ニコリと貼り付けた笑みは、向けられれば誰もが従ってしまいそうなもので、俺は気付いたら首を縦に振っていた。奏太は最後まで俺のことを心配してくれていたが、倫太郎は期待の目を向けるばかりで、足の小指をどこかにぶつけて痛い目にあえばいいと少しだけ思った。
「高嶋くんは有名人だね」
「あぁ…まぁ、前はあんな感じだったので。というか、会長が人気なだけですよ。」
「そんなことないよ。」
俺と会長という異色のコンビが並んでいるのを見て生徒たちが道を開けていく。そんな生徒たちに愛想良く手を振りながら会長は俺に話しかけてくれた。
嫌な空気……という程ではないが、微妙な沈黙が続いて勝手に気まずくなっている。会長とは面識こそあるが、ほとんど会話をしたことがないし、どんな人かもよく知らない。でも生徒会長といえばこの学園の顔みたいなものだし、常識人であって欲しい。
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