ヤクザ教師は隠したい

5/30
前へ
/565ページ
次へ
場所は変わって生徒会室。 ドラマでよく見る社長室のような雰囲気で、書類は丁寧に整理されていたり、ご立派なソファが置いてあったりなど初めての生徒会室にキョロキョロしてしまう。机は生徒会長が中心で、コの字を書くように他の机が並べてある。一つ一つの席に役職と生徒の名前の三角プレートが置いてあり、一ノ瀬と千鶴先輩は本当に生徒会なのだと改めて実感が湧いた。 カチャリと内鍵を閉める音に振り向くと、生徒会長が「お茶淹れるから適当に座って」俺に微笑んだ。生徒会室は重要書類があるとかで鍵を閉めるルールでもあるんだろうか、と自己解決して革のソファに腰掛けた。 「わっっ…ふわっふわだ」 「ははっ。生徒会室は関係者以外立ち入り禁止だから、そのソファに座れるのはなかなかレアなんだよ」 ティーカップとクッキーを乗せたお盆を持ってきた会長は柔らかい笑みを浮かべ、俺の前にそっとそれらを並べてくれる。よく笑う人当たりの良い人なんだなぁ、と思いながらコック帽を被ったパンダのクッキーに視線を移す。 「うわっ…美味しそう。だけど可愛くて食べるの勿体ない…」 「ははっ。そういえば高嶋くんは甘いものが好きなんだっけ?千鶴が嬉しそうに話してたよ」 「千鶴先輩が?」 「うん。本当にアイツは君に出会って変わったよ。あ、もちろん良い意味でね。」 知っている人の名前が出て少し和みつつ、しばらく他愛のない話が続く。クッキーを勧められ、手をふるふるさせながら可愛いパンダを歯でパキッと割って食べた。コックのパンダには申し訳ないがおいしかった。 構えていたが話せば話すほど良い人で、生徒会長に選ばれるのも頷ける。人望も厚そうだし、何より人の下につくのが嫌いそうなあの一ノ瀬が生徒会に入っているのだ。美味しいクッキーも出してくれたし、悪い人な訳がない。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5516人が本棚に入れています
本棚に追加