ヤクザ教師は隠したい

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途中通りがかった自販機で新さんが買ってくれたサイダーを片手に屋上のドアを開く。 「わぁ〜こっちの屋上初めて来ました!」 行ったことのある屋上より少し狭いが、他の学校に比べれば十分過ぎる広さで、人も来ないし穴場スポットだ。炭酸入りのペットボトルを持っているのも気にせずタッタと走って端の方まで走る。柵に足をかけて少し身を乗り出し、どのくらい高いのか地面を見下ろす。 「この下の階は生徒会室と風紀室くらいしかないからな。一般生徒は立ち入り禁止だ。」 「えっそれってやばいんじゃ」 「夏輝なら生徒指導といえば問題ないだろう。」 「あはは…」 少し遅れて追いついてきた新さんが柵に腕を置く姿は大人っぽくて絵になっている。 「あ!俺のクラス見えますよ!ほら、あそこ」 「あまり身を乗り出すな、危ない」 「わっ、すみません。」 俺が手を伸ばして教室を指さすと見兼ねた新さんが俺の体を支えてくれた。俺は柵からジャンプして下りて、クルリと回って柵に体重を預ける。 「新さんはよくここに来るんですか?」 「そうだな。考えことする時とか、1人になりたい時には来たりする」 プシュッとペットボトルを開けるとシュワシュワと炭酸が上に上がり、溢れそうになって慌てて口をつける。 「好きな人のこととか?」 サイダーを喉に通した後、新さんの顔を見上げて聞いてみた。新さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして俺を見つめ返してきた。違うのかな?と新さんを見つめながら首を傾げると、屋上の外に視線を戻し、遠くを見つめる新さん。 「相手にされなくて困っている」 「え!!!!!」 この完璧なスパダリである新さんに靡かない人がいるのだろうか。その相手は新さんが選んだ人なのだから素敵な人には違いないのだろうけど、新さんの良さに気づけないなんて…… 「新さんの好きな人は恋愛経験がないのか、よっぽど鈍感なだけだと思います!!」 自信満々に告げた俺を見て新さんは堪えきれず「くっ」と吹き出して笑った。
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